1961年、倒産した新東宝は三つの会社に分裂する。清算会社である新東宝本社、製作部門のニッポン・アートフィルム・カンパニー(NAC 後の国際放映)、そして配給会社として1961年の9月に設立されたのが大宝であった。
だがその活動も長くは続かず、年が明けた1962年の1月の頭には大宝は業務を停止してしまう。この僅か3ヶ月強の間に大宝によって配給された作品は次の5本。

『狂熱の果て』(佐川プロ製作 監督 山際永三 1961年11月1日公開)
『黒い傷あとのブルース』(佐川プロ製作 監督 小野田嘉幹 1961年11月22日公開)
『飼育』(パレスフィルムプロ製作 監督 大島渚 1961年11月22日公開)
『大吉ぼんのう鏡』(シナリオ文芸協会製作 監督 猪俣勝人 1962年1月3日公開)
『黒と赤の花びら』(佐川プロ製作 監督 柴田吉太郎 1962年1月14日公開)

 これに経緯は判らないが大宝の業務停止後に公開されたらしい『波止場で悪魔が笑うとき』(第一プロ製作 監督 中川順夫 公開日不明)を加えた計6本が大宝の配給作品の全てと思われる。
  この内、大島渚の『飼育』こそフィルムの現存がはっきりしており、DVD化もされているが、あとの5本については現在新東宝作品の管理をしている国際放映にもプリントはなく、また、5本の内3本を製作された故佐川滉プロデューサーも生前フィルムの所在を探しておられたが結局見つからなかったそうである。故にこれらの大宝配給作品は既に現存しない作品と永らく思われて来たのである。

※『波止場で悪魔が笑うとき』の監督について
当初『波止場で悪魔が笑うとき』の監督を中川信夫としていましたが、これはキネマ旬報記載のデータ(1962年3月下旬号掲載)及び今回見つかったフィルムを所持していた会社に対する問合せの返答に基づいたものでした。しかし、中川順夫監督説も拭い切れなかったため、クレジットタイトル部分の試写を行ったところ、そこに記されていた監督名は果たして「中川順夫」でありました。拠ってここに訂正させていただきます。

『狂熱の果て』
       プレスシート
『黒い傷あとのブルース』プレスシート

 上記の如く既に失われたと思われていた大宝配給の5作品、だが今回、遂に3本の作品の16mmプリントの所在を突き止めました!
見つかったのは『黒い傷あとのブルース』『黒と赤の花びら』そして『波止場で悪魔が笑うとき』の3作品。
  既に権利関係すらあやふやになっているこれらの作品を一般劇場でかける事は難しいかもしれません。しかし、これら幻の作品たちをスクリーンに蘇らせる為、「発掘!幻の大宝映画」と銘打って、新橋TCC試写室でのシリーズ上映を企画しました。

  7月の第一弾『黒と赤の花びら』、9月の第二弾『黒い傷あとのブルース』に続き、最終回・第三弾としてお贈りするのは中川順夫監督作品『波止場で悪魔が笑うとき』。
大宝配給6作品目に当たるこの作品は、大宝が存続していた1962年の1月までの間に公開された形跡のない謎の作品。しかし、冒頭にはちゃんと大宝マークが挿入されており、また、「大宝配給」と記されたポスターも存在している事から、大宝作品であることは間違いなく、大宝の業務停止時には既に完成していたものと推測されるものの、配給会社が消滅した後にどのような形で公開されたのか現時点では明らかになっていない、今回発見された三本の中では最も謎の多い作品。

当然ソフト化やCS放映なども望めないこの作品、この機会を逃すと今度はいつ観られるか判りません、是非、足を運んで幻の作品を堪能して下さい。

発掘!幻の大宝映画 第三弾!!  火を吐くルガー08の恐怖! 凄絶痛快アクション巨弾!
波止場で悪魔が笑うとき 1962年 第一プロ製作 大宝配給作品
シネマスコープ 16mm

製作:土肥静 監督:中川順夫 原案:広瀬利江 脚本:中沢信三/策明順 音楽:奥村一 撮影:宮西良太郎
出演:牧真史/泉京子/丘野美子/月田昌也/筑紫あけみ/鮎川浩/木村天龍/奈良優一/深見泰三/二本柳寛/コロムビア・トップ/コロムビア・ライト/チャーリー石黒と東京パンチョス 他
【あらすじ】
  数ヶ月ぶりに海から帰った健次を待って居たのは弟 信吉の死であった。真面目だったはずの弟がルガー08の弾丸を打ち込まれて殺されたというのだ。弟の死の真相を探るべく調査を開始した健次の前にやがて明らかになっていくのは麻薬組織の恐るべき陰謀であった....。
【解説】
 大宝配給作品『黒い傷あとのブルース』(小野田嘉幹監督)に主演した牧真史がここでも主役を務め、健次とその弟信吉の二役を演じている。相手役の踊子ルミを演じるのは小津安二郎監督『お早よう』への出演でも知られる松竹出身のヴァンプ系女優泉京子。
監督は『海底人8823』などのテレビ作品の他、主に独立プロで活躍し、児童映画からピンクまでもをこなす職人監督中川順夫。
  先にも記したがこの作品は永らく中川信夫監督作品ではないかと云う説もあった。その原因となったのがキネマ旬報1962年3月下旬号(No.307)に載ったこの作品の紹介記事である。ここには確かに監督が中川信夫と記されている。これが単なる誤植なのか記事の執筆者の間違いなのかは今となっては知る術もないが、この作品はまともに公開されたかどうかすら怪しい作品ゆえ、誰もその間違いを正すことなく、この記事が唯一ともいえる公的資料となってしまった事でその様な説が流布してしまったのであろう。なお、今回のフィルムの発見後、台本(準備稿)とポスターの現存を確認したが、当然その監督名は中川順夫と記されていた。
今回のフィルムの発見により、この間違いを正すことが出来たのは幸いである。
同時開催:大宝配給作品ポスター展
大宝配給作品全6作品のポスターを展示予定(協力:東舎利樹氏)
波止場で悪魔が笑うとき
≪上映スケジュール≫
10/17(土)       10/18(日)
15:00 開場 12:30 開場
15:30〜17:00   上映       13:00〜14:30   上映
この作品の正確な上映時間が判っていません。
その為、両日共にタイムテーブルはあくまでも予定となります。ご了承ください。
≪上映カンパ金≫
両日とも 1500円
≪会場≫
新橋TCC試写室
住所:東京都中央区銀座8丁目3番先 高速道路ビル102号 アクセス
≪ご予約について≫
ご予約なしの当日来場も受け付けますが、補助席を含めても46席の小さな会場ですので、満席の場合はご入場をお断りする場合があります。
確実なご鑑賞の為にはご予約をお願いいたします。 ご予約は下記予約フォームからどうぞ。
なお、ご予約のキャンセルは可能ですが、その場合は事前にご一報頂きたくお願いいたします。
ご連絡・お問い合わせ:daiho@nipponeiga.com
それでは皆様のご来場、お待ちしております。
フォームからの送信後、自動送信で確認メールが送信されますが、この時点ではまだ予約は成立しておりません。空席を確認して24時間以内に予約成立の返信をさせて頂きます。 万が一、24時間経過してもメールが届かない場合は、何らかの事情でフォームからのメールがこちらに届いていない可能性がありますので、お手数ですがメッセージ欄にその旨ご記入の上、再度フォームからお申込いただくか、下記アドレスにメールで直接お問い合わせ下さい。
なお、こちらからのメールが迷惑メールに振り分けられるケースがあるようです。 お問い合わせの前にメールソフト、フィルタソフトなどを一度ご確認下さい。 お問い合わせ:daiho@nipponeiga.com